9,300万年前の大事件の証拠
夕張市白金川の白亜紀海洋無酸素事変の露頭
夕張シューパロダム上流の白金川(しろがねがわ,しらきんがわ,はっきんがわ)に,白亜紀中期9,300万年前に起きた海洋無酸素事変 OAE2(Oceanic Anoxic Event 2) の露頭がある.この露頭は蝦夷層群佐久層に属し,走向・傾斜は NS,80°E であるが,地層は逆転しているので,東(上流)に向かって下位の地層となる.
ここで,白金川右岸の露頭を追っていくと下流では緑灰色の生物擾乱の発達する泥質砂岩であるが,生物擾乱の弱い黒色泥岩となり,さらに上流では生物擾乱の発達する暗灰色泥岩とタービダイト砂岩の互層となる.下流側の緑灰色泥質砂岩が白金(はっきん)泥質砂岩部層に相当する.このほかの岩相上の特徴としては,黒色泥岩部分は砂岩や酸性凝灰岩がほとんど挟在せず,黄鉄鉱の結晶が肉眼で認められることが挙げられる.
この黒色泥岩では,1)浮遊性有孔虫・底生有孔虫の産出が極端に少なくなっている,2)それまで生息していたイノセラムスが消滅する,3)硫黄含有量・有機炭素含有量がわずかに高い,といった特徴がある.
その他,諸々の証拠から,この黒色泥岩はチューロニアンとセノマニアンの境界で発生した世界的な海洋無酸素事変 OAE2と関連して海洋の溶存酸素濃度が低下したことを示していると考えられる..この事変の原因は,世界的な火山活動の活発化とそれに伴う二酸化炭素濃度の増大であることが近年の研究では指摘されている.
既存の指定など
富良野芦別道立自然公園
所在地
夕張市 白金川
参考文献
安藤寿男ほか〔2007)蝦夷前弧堆積盆の海陸断面堆積相変化と海洋無酸素事変層準:夕張〜三笠.地質学雑,第113巻 補遺,185-203.
Hasegawa, T., 1997. Cenomanian-Turonian carbon isotope events recorded in terrestrial organic matter from northern Japan. Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology 130, 251–273.
栗原憲一・川辺文久,2003.セノマニアン/チューロニアン期境界前後の軟体動物相:北海道大夕張地域と米国西部内陸地域の比較.化石,74巻,36-47.
Takashima,R. et al.(2004)Geology and stratigraphy of forearc basin sediments inHokkaido,Japan:Cretaceous environmental events on the North Pacific margin.Cretacous Rsearch 25,365-390.