付加体中の高水圧を示す
白神岬のジュラ系に見られる泥注入現象
陸のプレートの下に海洋プレートが沈み込んで形成される『付加体』を構成する地質体は,通常の地層とは異なるいろいろな特徴を持っている.その一つがメランジュである.その成因についてはさまざまな見解があるが,中でも興味深いのが,高い水圧を持った泥が貫入してできるという“泥ダイアピル説”である.
白神岬周辺のジュラ紀付加体(渡島帯)には,この泥ダイアピルの存在を示す含礫泥岩の産状が見出されている(大津・川村,1997).写真1は,含礫泥岩の付加体砕屑岩(砂泥互層)に対する貫入関係を示したものである.この周辺から,大津・川村(1997)によりサンプル・顕微鏡レベルの泥注入脈がいくつか発見されているが,その詳細についてはリンクページを参照していただきたい.
これらの付加体内部の高水圧を示す貴重な露頭は,その後駐車場(白神岬展望広場)と護岸の建設により,その大部分が失われた.
なお,泥ダイアピルが地表に噴出したものは泥火山(でいかざん)とよばれ,北海道では新冠泥火山が著名である.世界的には,インドネシアのジャワ・チモールなどで大規模な泥火山の例が知られている.
所在地
松前町 白神岬付近
リンク
参考文献
大津 直・川村信人,1997,渡島帯松前コンプレックス中の泥注入構造-付加体中の流体関与現象の一例-.川村信人・岡 孝雄・近藤 務編「加藤誠教授退官記念論文集」,151-159.
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