真珠岩の大露頭
奥尻島勝澗山の真珠岩
奥尻島の北西部にある勝澗山周辺には流紋岩溶岩が分布している.この流紋岩溶岩は基底部に軽石層と自破砕状溶岩を伴い主要部分は真珠岩質溶岩である.勝澗山付近で厚さは少なくとも40m以上である.パーライト鉱床として採掘されている勝澗山周辺では,最下部に暗灰色ガラス質光沢を持つ層状の黒曜石,灰白色の軽石質真珠岩,風化した砂状真珠岩と言う構成になっている.黒曜石と軽石質真珠岩の境界付近にはマレカナイト型真珠岩が挟在している.この流紋岩質溶岩の噴出年代は,フィッショントラック年代で約70万年前−20万年前が得られている.層序的には勝澗山流紋岩が高位段丘である青苗川段丘堆積物またはそれより一段下のフケ歌沢段丘堆積物を覆っている.
現在(2012年7月末),真珠岩の採掘は行われていて新鮮な切土面を観察できる.採掘場の見学は現場管理をしている堀清水組の布施氏に連絡する.
幾つか用語の説明をしておく(新版 地学事典およびDictionary of Geology & Mineralogyによる).
パーライト(perlite):日本語では真珠岩であるが,ここでは真珠岩などを焼成して多孔質にした製品を指す.膨張パーライト(expanded perlite)と言う呼び方がある.
真珠岩(perlite):多数の同心状−渦巻き状の割れ目を持つガラス質流紋岩で,水の含有量は4%以下である.勝澗山では灰白色のものを真珠岩(パーライト),ガラス光沢を持ち暗灰色緻密なものを黒曜岩(黒曜石)と呼んでいる.
黒曜岩(obsidian):ガラス質光沢を有する流紋岩質からデイサイト質のガラス質火山岩のことである.水の含有量は1%以下で比重が2.339−2.527と大きい.黒曜石とも言う.
マレカナイト(marekanite):真珠岩の中に含まれている円礫状あるいは亜角礫状の黒曜岩のことを言う.勝澗山周辺では,マレカナイト型パーライトは真珠岩と黒曜岩が混在しているパーライトで,噴出源の勝澗山から離れた場所に分布している.
所在地
奥尻町 湯浜
参考文献
藤原哲夫(1975)奥尻島のパーライト資源.地下資源調査所報告,No.47,49-57.
秦 光男・瀬川秀良・矢島淳吉(1982)地域地質研究報告 5万分の1図幅「奥尻島北部および南部地域の地質」.地質調査所,53-54.
鹿野和彦・吉村洋平・石山大三・Geoffrey J. Orton・大口健志(2006)北海道奥尻島,勝澗山火山の噴出物と構造.火山,第51巻,第4号,211-229.