江戸時代に開かれた炭鉱
旧茅沼炭鉱ズリ山と溶結凝灰岩
茅沼の石炭は安政3年に発見され,当時,外国船へ供給するための石炭の調査を行っていた箱館奉行が開発に着手した.茅沼の石炭の特徴は炭化度が高いこと(強粘結性)で,炭質が良いため長い間稼行できたと言える.ただし,炭層は厚いもので2.15m程度であり,炭層を横断する断層が多く採炭は効率的ではなかったという.茅沼夾炭層はN8゚E,35゚NWの走向・傾斜を示し玉川を横断して分布している.
この地域の5万分の1地質図幅の調査が行われた1951(昭和26)年頃は1,000人以上の従業員で毎月8,500〜10,000トンを出炭していた.
現在は,玉川沿いの道路(道々342号)からズリ山の偉容を見ることができる.
玉川沿いの道路を突き当たりまで行くと林道のゲートに突き当たる.この右手に砂防ダムがあり,帯紫灰色の茅沼溶結凝灰岩の露頭がある.透明な石英,白色のアノーソクレース(アルカリ長石の一種),流紋岩や粘板岩の岩片を含む.この溶結凝灰岩のフィッション・トラック年代は21.8Ma(玉川),25.6Ma(右股川)である.
この溶結凝灰岩は陸上での火山活動の産物で,その後,淡水環境で茅沼夾炭頁岩層が形成された.
所在地
泊村 茅沼
参考文献
加藤 誠ほか(1990)日本の地質1 北海道地方,48-49.共立出版.
茅沼炭鉱史編集委員会編(1982)茅沼炭鉱史.17-20.
雁沢好博(1983)フィッション・トラック方によるグリーンタフ変動の年代区分 その2−富山県太美山地域−.地質雑,第89巻,第5号,271-286.
斉藤正次・上村不二雄・大澤穠(1952)5万分の1地質図幅および説明書「茅沼」.6-13.北海道開発庁.
森田澄人(1992)積丹半島南西部,泊地域の新第三系地質.日本地質学会第99年学術大会講演会要旨,173p.
山岸宏光・積丹団研グループ(1979)積丹半島西南部の地質と火成活動ーとくに,層序とハイアロクラスタイトについてー.地質学論集,第16号,195-212.