じつは「若づくり」だった?
道北の平坦な山頂 函岳
北海道北部の美深町・音威子府村・枝幸町歌登地区にまたがる平坦な山頂.美深町側から見ると手前に傾く平坦な板のように見える.反対に歌登区側から眺めると屋根棟山とあわせて巨大な軍艦のようにも見える.この標高1,129m,ほとんどが安山岩溶岩と同質火砕岩から構成される山が函岳である.
函岳を構成する安山岩は,地形開析が進んでいるとは言え,山頂および山腹に溶岩地形と思われる平坦な地形をよく残している.加えて変質作用を受けていないことから,鮮新世後期〜第四紀はじめ(300〜100万年前)にかけて形成された火山と考えられてきた.また日本の多くの第四紀火山とは異なり,100mに達すると推定される厚い溶岩流がこの平坦な地形を形成していると考えられ,特異な安山岩溶岩として「平坦溶岩」と呼ばれたこともある,
しかし1980年代以降,道北地域の火山岩についてFT法やK-Ar法による年代測定が行われると,函岳の安山岩溶岩も約1,200万年前(中期中新世)に噴出した古い溶岩であることが指摘されるようになった.加えてパンケサックル川下流や美深パンケ川支流左の沢において中新世恩根内層と安山岩溶岩との指交関係が報告されたことで,函岳は「若づくりの火山」であったことが明らかとなった.
しかし,なぜ函岳をはじめ,ピヤシリ山・乙部山などの道北名寄盆地東方に分布する中新世安山岩溶岩が,専門家をも欺き通せるほど「若づくり」でいられたのか? その理由は,道北の中期中新世以降の地史を考える上で興味深いが,適切な説明はなされていない.
所在地
美深町 恩根内
音威子府村 咲来
枝幸町 歌登
リンク
参考文献
後藤芳彦ほか(1995)北海道北部の中新世火山活動の活動場 : K-Ar年代と主成分化学組成からの推定.岩鉱,90,109-123.
北海道開発庁(1965)5万分の1地質図幅「恩根内」及び同説明書.32p.
垣原康之(1999)北海道北部美深町函岳地域の新第三紀火山岩類の層序.地質雑,105,13-24.
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