積み重なる大きな岩塊
然別 白樺峠の千畳くずれ
鹿追町から糠平湖へ抜ける道道85号を北に向かい,白樺峠にさしかかる道路左手に径数mの岩塊がいくつも積み重なっています.ここは「千畳くずれ」と呼ばれています.樹木が生えていますが,あたりを見回し,比較すると「千畳くずれ」の部分は植生がわずかであることがわかります.これらの岩塊の隙間には,ナキウサギが生息しており,時折,特徴のある鳴き声を響かせることがあるそうです.
然別湖周辺には東ヌプカウシヌプリ(1,252m),白雲山(1,186m),天望山(1,173m)などの多くの溶岩円頂丘が群をなしています.これらの円頂丘群の岩質は安山岩やデイサイトです.「千畳くずれ」の岩塊は,白樺峠西方の溶岩円頂丘の一つである西ヌプカウシヌプリ山(1,251m)から崩落した岩塊が山麓に堆積したものです.白樺峠まで登り,「千畳くずれ」の反対側,東ヌプカウシヌプリの山腹を見てみましょう.広範囲にわたり,大きな岩塊が無数に露出しています.「千畳くずれ」のような大きな岩塊の集積している産状は,植生で覆われて判別しにくいことが多いのですが,然別湖周辺では普通に見られるものです.
このような崩壊は寒冷な気候のもとで起こる凍結融解作用による機械的風化が主要因と考えられています.溶岩円頂丘の亀裂(節理)に浸透した水が凍結・膨張し,亀裂を押し広げるため,円頂丘表面が破砕され岩塊となります.安山岩やデイサイトには数10cm〜数m角の節理がもともと多いため,凍結融解作用を受けると大きな岩塊が形成されやすいのです.
既存の指定など
大雪山国立公園 特別地域
所在地
鹿追町 然別 白樺峠
リンク
参考文献
十勝の自然史研究会 編(2000)改訂版 十勝の自然を歩く.北海道大学図書刊行会,269p.
山岸 宏光,安藤 重幸 (1982) 5万分の1地質図幅「然別湖(釧路-17)」および同説明書. 北海道立地下資源調査所, 26p.
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