重なる溶結凝灰岩が作る対照的な2つの滝
丸瀬布 山彦の滝と鹿鳴の滝
遠軽町丸瀬布のシンボル的存在でもある「山彦の滝」と「鹿鳴の滝」は,上武利の道道1070号からやや山へ入った所にある.道路脇には駐車場および遊歩道も整備されており,7月には「滝まつり」も開催される.
山彦の滝は落差28mの瀑布(男滝)である.滝壺は発達しておらず,河床部に落下している.この滝は崖の下部がえぐれており,ここに入り,滝の裏側から落水越しに風景を楽しむことができる.このため別名「裏見の滝」と呼ばれる.Wikipediaによると「裏見の滝」と名付けられた滝は,栃木県日光,群馬県水上,東京都八丈島,長崎県大村に存在する.この他,裏側に入れる滝が10カ所紹介されているが,残念ながら山彦の滝は紹介されていない.
一方「鹿鳴の滝」は苔むした岩盤を撫でるように流れる女滝である.山彦の滝とは対照的に静寂な雰囲気を醸し出している.ここは鹿が水を飲みに集まる場所とされ,北海道内における鹿の三大生息地と言われているようである.
「山彦の滝」と「鹿鳴の滝」は安山岩質溶結凝灰岩と流紋岩質溶結凝灰岩の地層境界部に位置する.下位の安山岩質溶結凝灰岩は発泡の良い軽石を多量に含み溶結程度が低いため,風化・浸食に弱い.一方,上位の流紋岩質溶結凝灰岩は溶結の程度が高く,かつ流紋岩の石質岩塊を頻繁に含むために相対的に堅牢である.
荒々しい男滝「山彦の滝」は堅牢な流紋岩質溶結凝灰岩の壁であり,岩盤表面もゴツゴツしている.静寂な女滝「鹿鳴の滝」は相対的に軟質な安山岩質溶結凝灰岩であり,岩石表面は滑らかな印象を受ける.このように構成する岩盤の違いが,両滝の異なる雰囲気を醸し出している.
所在地
遠軽町 丸瀬布
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参考文献
北海道開発庁(1967)5万分の1地質図幅「丸瀬布(網走-34)」および同説明書,28p.
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