雷の化石!?
岩見沢奈良の雷管石
昭和43年6月6日,山林巡視員がパトロール中に岩見沢市奈良川支流鷲の沢にて「溶岩のかけら」のようなものを見つけた.これが“日本初の報告”となる「雷管石(fulgurite)」の発見の一場面である.雷管石は,一般的に,落雷により約6億ボルトの高電圧が流れた部分の地中が溶融して,急冷・ガラス化したものとされる.世界的にみると雷管石の産出地は,地表部にガラスの原料となる石英粒子の割合の高い砂漠地帯が多く,その形状は筒状で長さ10cm前後のものが普通である.
岩見沢の雷管石は中部蝦夷層群三笠層中のシルト岩中に見いだされた.幅は約2m,深さ約1.4m,最大径は41cmにおよび木の根のような形状をしている.全体の重量は230kgと推定されている.この雷管石の一部(約60kg)が,岩見沢郷土科学館に展示されている.この展示標本の断面をみると黒曜石によく似た黒色ガラスであるが,その他,濃緑・緑・黄緑・茶・紫・白色を呈する部分もある.黒色ガラスは周囲に向かって茶灰色を呈し,気泡が多くなる.標本の表面は中部蝦夷層群と思われる砂岩・シルト岩の角礫がガラスにより固定されている.
このような巨大な雷管石が,本当に瞬間的な落雷でできるのであろうか? 実は,採取地点では直上を通る送電線が切れた事故の記録がある.この切れた送電線が地表に触れた後,事故対応までの間に地中へ電流が流れることにより,シルト岩が高温・溶融してできたと説明されている.
所在地
岩見沢市 奈良町
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参考文献
猫塚 悟・秋葉 力(2000)北海道岩見沢市で発見された雷管石.地学研究,49,29-39.