蛇紋岩の大崩壊と土石流扇状地
八幡の大崩れ
日高町から国道274号を札幌方面に向かい,いくつかのトンネルを抜けて鵡川沿いの谷が開けるあたり,鵡川右岸の斜面に大きな「崩れ」が遠望できます.これが「八幡の大崩れ」です.麓にはそこから来た岩屑が堆積した土石流扇状地があり,かつてはその岩屑が砂利として採掘されていました.
「大崩れ」は蛇紋岩化したかんらん岩(ダナイトとハルツバージャイト)からなっています.かんらん岩は破砕しブロック状になっており,ブロックの間には花崗岩のマサ(真砂)のような柔らかい黄緑色の砂状の部分(変質帯)が観察できます.このような地質のために崩壊しやすいのでしょう.
扇状地堆積物や斜面には,樽前b火山灰(A.D.1667 )を初めとする火山灰や埋没土壌があり,その解析などから扇状地の形成過程が明らかにされています.それによれば,「大崩れ」はおよそ1000年前以前に大規模崩壊として始まり,その後土石流が頻繁に発生していました.やがて植生の生育に伴って,300年前くらいから土砂生産が減少してきたということです.
所在地
むかわ町 福山
参考文献
柳井清治・新村義昭,1990,大規模崩壊地における土石流扇状地の発達過程.地形,11,(4),349-362.
Mitsuru Nakagawa, E. Ota and K. Kurosawa, 1991, Platinum-group minerals from the Mukawa Serpentinite, southern Kamuikotan Belt, Japan. Mining Geology,41, (5), 329-335.