占冠・双珠別川で観察できる
蝦夷層群中のオリストストローム
白亜紀の前弧海盆堆積物である蝦夷層群の中にスランプ体が存在することは古くから知られていたが,オリストストローム(大規模海底地すべり体)という認定を行い,従来の層序区分の再検討の必要性を指摘したのは,高嶋ほか(1997)が最初である.
双殊別川に富良野-芦別地域から連続する石灰岩体が露出し,その見かけ上位に礫岩が存在することは,例えば酒匂・小山内(1962)でも指摘されており,礫岩は“中部蝦夷層群”の基底礫岩,石灰岩体を含む層準は“下部蝦夷層群”とされ,両者は不整合関係にあると考えられてきた.高嶋ほか(1997)はこのような見方を全否定し,石灰岩も礫岩も,一つのオリストストロームの中の岩塊であるとした.この斬新な見方は,川村ほか(1999)でも支持され,双殊別スランプ体と呼ばれた.
このスランプ体は,双殊別川とその支流の二番滝川合流点周辺に露出し(写真1),川も浅くて歩きやすいので,その構成岩相や構造がよく観察できる(写真2).
所在地
占冠村 双珠別川
参考文献
川村信人・植田勇人・鳴島 勤,1999,前弧海盆堆積物中の不整合とスランプ体-中部蝦夷層群基底部の層位学的現象-.地質学論集,No.52,37-52.
酒匂純俊・小山内 煕,1962,5万分の1地質図幅「千呂露」および同説明書.北海道立地下資源調査所,46p.
高嶋礼詩・鈴木紀毅・小池敏夫・斎藤常正(1997) 北海道双珠別地域における下部・中部蝦夷層群境界の不整合の検討とその地史的意義-中蝦夷地変の再検討-.地質学雑誌,103, 489-492.
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