地すべりは形を変えて繰り返す
津別町本岐地すべりの跡
昭和28年5月31日午前2時頃,津別町字木樋の造林飯場の裏手400mの山中で,幅100m,奥行き120mの斜面が崩壊した.崩壊した土砂は流下して,沢口にあった飯場を押し倒した.このため就寝中の作業員16名が犠牲となり,生存者は道路側の中2階にいた2名のみであった.雨は前々日の夕方から降り続いていたという.
現在でも崩壊源や堆積地形は残されており,移動した土砂は小さな流れ山を作って堆積したことがわかる.この地すべりは現在の用語でいえば「岩屑なだれ」や「高速地すべり」といわれるタイプの地すべりだったと考えられている.ここは,古第三紀の頁岩砂岩が滑動した大規模な地すべり地形の一部で,過去に大きな岩盤地すべりがあった場所である.地すべりは繰り返すといわれるが,ここでは高速で長距離を流下する「高速地すべり」へと姿をかえて人間を襲った.地すべり跡には異常成長した広葉樹が見られ,被災地の沖積錐(土石流堆)への入口には慰霊碑が立っている.
所在地
津別町 字木樋
参考文献
地質調査所(1965)5万分の1地質図幅「本岐(網走-58)」および同説明書.46p.
北海道大学理学部地質学鉱物学教室,1954,昭和28年5月31日北見国津別町本岐の地辷.北海道地質要報,no.25,23-28.
伊藤陽司・雨宮和夫・石井正之・田近淳・戸田英明・豊田守・宮坂省吾,2007,津別町本岐の地すべり災害-50年後にふりかえる.平成19年度(社)日本地すべり学会北海道支部・北海道地すべり学会研究発表会予稿集,38-42.