神居古潭帯最北部の山地
日本最北かつ最大の知駒岳蛇紋岩メランジュ
知駒岳(しりこまだけ)周辺の蛇紋岩メランジュ〔敏音知(ぴんねしり)蛇紋岩体〕は,日本最北の大規模な蛇紋岩メランジュ帯(東西約5km,南北15km+)である.これを含む神居古潭帯はサハリンのススナイ帯へと続く.この岩体は蛇紋岩化作用が著しく進み,かつ葉片化の進んだ蛇紋岩中に,緑色岩(知駒岳=標高529mなど),角閃岩(摺鉢山など),石英片岩,緑色片岩などのブロックが散在し,これらが緩やかな起伏の蛇紋岩中に突き出して独得の地形をつくっている.石英片岩のK-Ar年代として111Maが知られている.
このメランジュ中に藍閃石片岩など典型的な高圧変成岩は知られていない.幌加内オフィオライトと類似のはんれい岩層状分化岩のブロックが存在する.
本地域の蛇紋岩の原岩はハルツバージャイト(斜方輝石かんらん岩)とダナイト(ダンかんらん岩)が主体で,少量の斜方輝岩を含み,初生鉱物の残存は稀である.全体に通常の蛇紋岩化作用の後に熱水変質作用を受け,一部に蛇紋岩起源のアンチゴライト-マグネサイト岩,石英-マグネサイト岩,石英岩が見られる.熱源が関与して生成したと考えられている“へき開”の発達したかんらん石(cleavable olivine)を含んでいた蛇紋岩も広く見られる.これらはおそらく,新第三紀の火山活動の影響によって生成したのであろう.
所在地
幌延町
中川町
中頓別町
参考文献
猪木幸男(1959):5万分の1地質図幅「敏音知」および同説明書.地質調査所,41p.
加藤孝幸(1985):道北の蛇紋岩と「へき開」の発達したかんらん石.士別市立博物館報告,3,47-53.
加藤孝幸・新井田清信・渡辺暉夫(1979):神居古潭構造帯,知駒岳周辺の蛇紋岩メランジュ帯.地質雑,85,279-285.
渡辺暉夫・中川 充・板谷徹丸(1988):神居古潭構造帯形成に関する放射年代からの一考察(K-Ar年代の追加とまとめ).総研連絡誌「北海道の構造帯-岩石学とテクトニクス」,3,123-125.