地すべりは水と土地をもたらす
釧路―厚岸海岸の地すべり地形
釧路町昆布森から厚岸湾岸にかけての海岸線は急峻な斜面からなっており,人の住むことのできる平地は限られている.そのわずかな平地は地すべりによってつくられたものである.地すべりは,緩やかで変化に富む地形と豊かな水をもたらしてくれるが,時には滑動を繰り返して災害をおこす.難読地名としても知られている釧路町の来人臥・浦雲泊・入境学・知方学・去来牛・古番屋・仙鳳趾などの地すべり,厚岸湾岸の沖万別・苫多地すべり,そして東側湾口の床潭・ピリカウタ地すべりがそれである.
この海岸の地すべりは滑動時の様々な地形を良く残しており,その形態や活動度は地質・地質構造を強く反映している.入境学などの地すべりは,古第三紀の砂岩層の上に石炭・泥岩・凝灰岩の地層,さらにその上に硬い礫岩・砂岩層が載ったサンドイッチ状の地質でできており,規模が大きな岩盤地すべりである.湾岸の苫多地すべりは成層した泥岩の地すべりで,防止工事が進む以前には毎年のようにあちこちで小規模な活動が見られた.柔らかな泥岩の上に堅硬な砂岩・礫岩が載った場所で起ったのがピリカウタ地すべりで,昭和初期には海底が隆起したこともあったという.
所在地
厚岸町 昆布森・跡永賀・仙鳳趾
参考文献
北海道立地下資源調査所(1963)5万分の1地質図幅「床潭(釧路-49)」および同説明書.19p.
田近淳・岡村俊邦・坪山厚美・山岸宏光,1994,海岸斜面の地すべりの地質規制とその形態的特徴-釧路―厚岸地域の地すべり.地下資源調査所調査研究報告,no.22,45p.