珪質頁岩からなる岬
石器石材の原産地としての黒鷲岬
渡島半島の旧石器~縄文遺跡から出土する剥片石器の石材として黒曜石が従来から注目されている.しかし,黒曜石は剥片石器のせいぜい4分の1で,その大半は黒曜石に準ずる無片理,非変形の珪質頁岩である.このような(非変形)珪質頁岩は中新世の主として八雲層相当層のうち火成岩(流紋岩,石英斑岩,ドレライトなど)の貫入による接触変成帯に出現することがわかった.このような産状の珪質頁岩のうち,最大規模のものが黒鷲岬やその周辺に分布する.色調は黒色で一部暗赤褐色(チョコレート色).全体として透明感に富むが,その中でも不透明な部分とガラス光沢をもつ透明感に富む部分がある.細粒緻密等方で剥片石器の石材として好適である.
この地層は八雲層相当層である汐泊川層の八木川頁岩部層に属する.岬だけで長さ50mの露岩が見られるが,海岸方向に延長し,また,幅は100m以上にわたると推定される.このような規模の珪質頁岩の生成には,南西側 約1kmを北東端とし,幅2~3km,長さ10kmで北西- 南東方向のトレンドで分布するデイサイト(~石英斑岩)の貫入が関っていると考えられる.
所在地
函館市 尾札部町 黒鷲岬
参考文献
藤田 登ほか(2005):考古学ジャーナル,535,29-31
数川栄典・渡辺儀輝(2002):「道南の自然を歩く-改定版」.北大図書刊行会.
庄谷幸夫・高橋功二(1967):5万分の1地質図幅「尾札部」.北海道開発庁.
鈴木 守ほか(1969):5万分の1地質図幅「東海」.北海道開発庁.