日本海誕生時の面影を残す
福島町松浦の赤はげ礫岩
福島町から白神岬方面に向かうと,途中に戸谷覆道がある.その手前の斜面を見上げると,特徴的な赤紫色の露頭が見える(写真1).これが『赤はげ礫岩』である.赤はげ礫岩は,この地域の新第三系の最下部にある福山層の基底礫岩で,約2千万年前のものである.福山層は,渡島帯のジュラ紀付加体を不整合に覆っており,陸成の安山岩溶岩や溶結凝灰岩を主体としている.
赤はげ礫岩の露頭に接近して見ると(写真2),遠目で見るよりも大きな礫が含まれており,迫力がある.付加体を構成する泥岩・砂岩やホルンフェルスのほかに,花崗岩質岩・安山岩・溶結凝灰岩の礫も含まれている.礫岩の中には砂岩のレンズも含まれており(写真2),おそらく扇状地性の河川成堆積物と考えられる.特徴的な赤紫色は,陸上風化による水酸化鉄の沈着によるものであろう.
赤はげ礫岩の向かって左下にはジュラ紀付加体が露出しているが,植生のため不整合面ははっきり分からない(写真1).秦ほか(1990)によると,以前この南方地点で見事な不整合面が観察できたらしいが,現在は道路工事等により見ることができなくなっている.
この赤はげ礫岩が堆積した当時は,日本海がまだ大きく開いておらず,西南北海道はアジア大陸の東はじに近いところにあった.赤はげ礫岩は,その頃の面影を私たちに感じさせてくれる.この後,西南北海道は本格的な日本海の時代へと移っていく.
所在地
福島町 松浦南方付近
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参考文献
秦 光男・箕浦名知男・大沼晃助・加藤 誠,1990,地域地質研究報告(5万分の1地質図幅)『松前地域の地質』.地質調査所,98 p.