神居古潭帯唯一の新鮮なかんらん岩
岩内岳のかんらん岩
岩内岳かんらん岩体は神居古潭帯の蛇紋岩の中で蛇紋岩化作用を完全にまぬがれた100%新鮮なかんらん岩である.周囲の沙流川蛇紋岩体の中に直径約1kmのまんじゅう形の山(岩内岳:標高964m)として存在している.露頭は国道237号から岩内林道を約5kmで岩内岳南東斜面のかんらん岩採石現場に至る.現場は発破を伴う採石作業により危険で,立入禁止である.林道もダンプカーが往来するので注意が必要である.林道途中の広場では蛇紋岩化が部分的に進んだかんらん岩(斜方輝石かんらん岩,ダンかんらん岩)を見ることができ,また岩内岳の新鮮なかんらん岩の砕石を観察できる.
岩内岳のかんらん岩は幌満かんらん岩に比べて,一般に緑色味に乏しく,暗灰色のものが多い.斜方輝石かんらん岩は灰白色半透明のかんらん石集合体中にあめ色(黄褐色)を呈するへき開の発達した粗粒鉱物として散在する.黒色のスピネル(クロマイト)を少量含み,まれに鮮緑色の単斜輝石が見られることもある.これらのかんらん岩はマントルかんらん岩が島弧の下で部分溶融を受けてマグマを生成した後の溶け残り(斜方輝石かんらん岩)とマグマチャネルで結晶した岩相(ダンかんらん岩の大部分)であると考えられている.
所在地
沙流郡日高町 三岩
参考文献
北海道立地下資源調査所(1978)5万分の1地質図幅「岩知志(札幌-45)」および同説明書.46p.
番場猛夫(1955):岩内岳橄欖岩体.北海道地質要報,29,7-14.
加藤孝幸(1978):神居古潭帯の沙流川超塩基性岩体について.地球科学,32,273-279.
加藤孝幸・中川 充(1986):神居古潭構造帯超苦鉄質岩類の由来.地団研専報,31,119-135.
田村明弘・牧田宗明・荒井章司(1999):北海道,神居古潭帯のかんらん岩の成因.地質学論集,52,53-68.
山崎大輔・新井田清信(1993):神居古潭帯岩内岳カンラン岩体-高Mgカンラン岩中のマグマチャネル.日本地質学会 第100年学術大会,演旨,575.