被災の歴史と様々な地すべりの微地形
積丹半島沼前の大規模地すべり地形
神威岬をまわって積丹半島の西海岸に出たところに沼前(ノナマイ)の大規模地すべり地形があります.地すべり地形とは,その名のとおり大地がすべり動いて出来た地形のことです.中央部の幅450mほどの部分は最近まで動いていて,1年間で1mも海に向かって移動したこともあったそうです.昭和初期にはここにあった袋澗が破壊された記録もあります.このため昭和45年春にはここにあった集落が移転しました.その後,地すべりの先端に土や岩の重石を積んだり,すべりを促進させていた地下水を抜き出すなどの対策工事が進められて,現在では動きはおさまっています.近くには,「動いた石」の伝説を伝える石神社もあるので,江戸時代には既に地すべりの被害が起こっていたのかもしれません.
山のほうを眺めると,手前の緩やかな斜面を取り囲むように,高さ100mを超える安山岩質ハイアロクラスタイトの岩壁(滑落崖)がそびえています.手前の緩やかな斜面が地すべりによって移動した部分です.地面がゆっくりとすべりだすと,地表にはズレによる亀裂や,引っ張られてできた段差・凹地,押されてできる盛り上がりなど,様々な地形ができます.かつては,こうして出来た生々しい崖や沼などの微地形がみられました.
既存の指定など
ニセコ積丹小樽海岸国定公園
所在地
積丹町
参考文献
北海道立地下資源調査所(1979)5万分の1地質図幅「積丹岬・余別(札幌-8,1)」および同説明書.49p.
田近淳,1997,積丹半島沼前地すべりの移動過程.日本地質学会第104年学術大会講演要旨,307.
山木栄治・藤原知行,1999,積丹町沼前地すべり.北海道の地すべり’99,地すべり学会北海道支部,126-129.